灯台が舞台の閉鎖空間SF、という紹介を見たのでがっつりしたミステリを予想した。着地点はもっと穏やかで、それでいてずっと根気がいる話だった。以下、印象の断片のみ。ネタバレは避けるつもりで書いているが、記憶という偏識は信用ならない。
「職務を続ける理由を、彼は毎日、潮に問い、潮は毎日、同じ速さで答える。」
引き算の技術が素晴らしい。第三部あたりで作者は読者に種明かしを提供する機会を一度ももたなかった。その代わりに灯台の記録簿という形式だけを用意して、読者に『気づいたあなたが選んだ事実』だけを残す。この結末の置き方そのものが評価対象だと思う。
読み終えた夜、ベランダに出て空を見上げた。意味はないが、そういう夜だった。